ユーザーの想いをデザインに反映したオンリーワンのジュエリー
LIBERTAS TOKYO 羽角 仁志さん
既製品のアクセサリーでは物足りないけれど、フルオーダーはちょっとハードルが高い……。そんな方にぴったりのお店がここ、「LIBERTAS TOKYO(リベルタストーキョー)」です。自由な発想と遊び心がそこかしこに見え隠れする「LIBERTAS TOKYO」のモノづくりについて、代表兼デザイナーの羽角仁志さんにお話を伺いました。
30歳を目前に“好きなこと”を追求する道を選択
柳橋の裏通りにあるLIBERTAS TOKYOは、オリジナルブランド「LIBERTAS」のジュエリーやアクセサリー、革小物などを企画制作販売するファクトリー&ショップです。シックなトーンでまとめられた店内には、無数のチャームやアクセサリー、革小物などがズラリ。お店の一角は工房スペースになっていて、職人さんが金属加工をしている様子を間近に見ることができます。
「モノづくりの現場の空気感が伝わるお店にしたかったので、こういう形にしました。オープンキッチンのあるレストランって、料理人の仕事ぶりが見えてワクワクしますよね。そんな雰囲気を演出できたらいいな、と思ったんです」と、代表兼デザイナーの羽角仁志さんは話します。
20代のころは出身地である山形県で会計事務所に勤めながら、税理士を目指していたという羽角さん。しかし、30歳を目前にしたとき、何かしら起業したいという思いが強くなるとともに、「好きなことにチャレンジできるのは、年齢的にも今が最後のチャンスかもしれない」という考えが頭をよぎるようになりました。
そこで、もともとモノづくりが好きだったこと、さらにファッションやアパレルにも関心が高かったことから、ジュエリーの専門学校に通い始めることに。並行して、独学で革小物の制作技術も習得し、2007年にオリジナルブランド「LIBERTAS」を立ち上げました。
街のアクセサリー屋さんでありたい
“LIBERTAS”とは、ラテン語で「自由」を意味する言葉。この名を冠したのは、「あまりコンセプトやテーマを決め込みたくない」という気持ちからだそう。
「自分自身の好みや興味が変化していく中で、いつも自由な発想でデザインを展開していきたい。そして、お客様にも自由に遊んでいただけたら、という2つの想いを込めました。フレームはこちらで用意するので、その中でお客様に思い思いに楽しんでいただく──そんなエンターテインメント性も織り交ぜた、カスタムオーダーの要素を取り入れたかったんです。それと、いつも心がけているのは、間口の広さと敷居の低さ。小さなお子さまからご年配の方まで、どなたでもふらっと立ち寄って楽しんでいただけるような、街のアクセサリー屋さんでありたいんです」(羽角さん)
確かに、商品をあらためて見てみると、ありきたりではないカッコ良さがありながらも、世代や性別を問わず、身につけたくなるようなものがたくさん。しかも、チェーンやビーズ、天然石などさまざまなパーツを取り揃えていて、その場で加工してもらうこともできるので、自分が求めるイメージに合わせて自由にカスタマイズできるのも大きな魅力です。
「基本的にクラシック感とナチュラル感のあるものが好きなんです。以前は、ゴリゴリのメンズアクセサリーを意識的にやっていた時期もありましたが、年齢を重ねるごとにシンプルになってきましたね。普段着で身につけてなじむものじゃないと、僕自身もあまり欲しいとは思わないですから」(羽角さん)
そんな羽角さんがこのブランドで最初に展開したのが、「言葉」をテーマにした“リベルタスロゴス”というシリーズ。アンティークテイストのジュエリーに自由にメッセージを刻印できるというもので、まさにユーザーの想いが吹き込まれて初めて完成する、オンリーワンのジュエリーです。
「リベルタスロゴスは、アクセサリーとしてだけでなく、お守り的な感じでも身につけていただけます。相手の方に贈りたい言葉を刻んで、ギフトにされる方も多いですね」(羽角さん)
新たなブランドが飛躍のきっかけに
ブランド立ち上げからしばらくは、百貨店の催事やポップアップショップなどに出店し、地道に活動を続けていた羽角さんですが、3年ほど経過した2010年、大きな転機を迎えました。大手百貨店のバイヤーから声をかけられたことをきっかけに、新たなゴルフグッズのブランド“リベルタスゴルフィーノ”を立ち上げることになったのです。
これは、より上質なゴルフライフを提案するゴルフジュエリーシリーズで、従来のゴルフグッズにはなかったデザイン性の高さとオリジナリティがゴルフ愛好家の間で評判を呼び、今やLIBERTASを代表するロングセラーブランドになっています。
なかでも断トツの人気を誇るのが、バラエティに富んだゴルフマーカー。豊富なデザインが揃うほか、オーダーメイドで名前や記念日、誕生石などが入れられるため、特別感のある贈り物としても多く利用されているそうです。
「お客様からは、『こういうのを探してたんだ!』『プレゼントされたらすごくうれしい』という声をよくいただきます。ギフトでご利用いただく機会も多いのですが、最近は若い方もゴルフを楽しむ方が増えて、ご自身用をお求めにご来店される方も以前より増えています。ゴルフに行く仲間うちで話題になって、ご購入にいらしていただくケースもあるみたいです。今では、ほかの百貨店やセレクトショップからもお声がけいただけるブランドにまで成長して、販路拡大の大きなきっかけになりました」(羽角さん)
お客様とキャッチボールしながら、ずっとつながっていたい
さりげないなかにも、ひとかたならぬこだわりが詰まったLIBERTASのアイテムの数々。お店を訪れた際は、ぜひ革小物も手に取ってみてください。たとえば、封筒をモチーフにしたという長財布。美しい光沢感となめらかで優しい手触りは、思わずうっとりしてしまうほどです。
「革を折り返したときの丸みが好きなので、一枚革でつくって、縫製も最小限に抑えています。シンプルな造りなので、壊れにくいのもメリットですね」(羽角さん)
革小物は、ヴィンテージボタンをモチーフにしたオリジナルボタンやパーツなどをプラスしてカスタマイズできるので、自分好みにアレンジできるといった楽しさも。そして、製品のリペアはもちろん、革がくたびれてしまったときは、付属のパーツをペンダントトップにしたり、別の革製品につけたりなど、新たな形で蘇らせてくれるのもうれしい限りです。
「デザインの切り売りはしたくないな、と思って。一度買っていただいたらそれで終わりではなくて、お客様とキャッチボールしながら、ずっとつながっていたいんです」(羽角さん)
革製品は使うほどに手になじみ、エイジングも楽しめるものだけに、こうしたスタンスで常に寄り添ってくれる存在があると、より長く、大切に使い続けたくなります。
自由度とクオリティを両立させたワークショップ
LIBERTAS TOKYOでもう1つご紹介したいのが、リピーター続出中のワークショップです。「いろいろな方が遊びに来てくれる、ライブ感のあるお店にしたい」との想いから始めたこのワークショップでは、リーズナブルな価格でリングやバングル、チャームなどを作ることができます。素材や形を選び、ハンマーで打って模様をつければ、世界でたった1つの作品が完成! 溶接など難しい加工はスタッフの方がやってくれるので、誰でも気軽に体験することができます。
「ワークショップを始めるときに考えたのは、自由度とクオリティの両方をお届けできる内容にしたいな、ということ。『どこで買ったの?』『自分で作ったんだよ』『えっ!? すごい!』というやりとりが、お持ち帰りいただいたアクセサリーで交わされるくらいのものにしたかったので、このようなスタイルにしました。奥深さはあっても、作業自体はハードルが高くないので、お子さんにもよくご利用いただいています。ご自分用はもちろんですが、お父さんと一緒にお母さんやおばあちゃんへのプレゼントを作りにいらっしゃる、なんていうこともよくあります。カップルでペアリングを作りにいらっしゃる方はやはり多いですね。そんなふうに、たくさんの方にモノづくりの楽しさを体感していただけたらうれしいです」(羽角さん)
どんな人も受け入れる懐の深さに加え、ユーザーひとり一人と向き合い、想いをかたちにしてくれる──そんな優しさと温もりにあふれたLIBERTAS TOKYOのモノづくりは、これからもたくさんの人を笑顔にしてくれることでしょう。
LIBERTAS TOKYO
東京都台東区柳橋1-26-6
TEL:03-5825-4581
URL: https://www.libertas-tokyo.com/
Photo by Hanae Miura
Text by Miki Matsui