「海の宝石」を通して自然からのメッセージを感じてほしい
Playacolores
武田 綾子さん
「海の宝石」でつくった一点もののアクセサリー
みなさんは“シーグラス”をご存知ですか? シーグラスとは、元は人工物であるガラスの欠片が海を漂った後、長い年月をかけて浜辺に流れ着いたものです。波に揉まれ、岩や砂などに角を削られることにより、形は丸みを帯び、表面はすりガラスのように曇っているのが特徴。その美しさは、「海の宝石」「人魚の涙」「海からの贈り物」とも呼ばれるほどです。そんなシーグラスを素材としたアクセサリーを製作しているのが、武田綾子さんが代表を務める「Playacolores(プライアカラレス)」です。ブランド名の「Playacolores」は、スペイン語で“海の色彩”という意味。下町にいながら海を感じられるように、との思いが込められた工房は、一方足を踏み入れた瞬間、南の島へとワープしたかのような空間で、思わずテンションも上がります。

Playacolores代表の武田綾子さん
そもそも武田さんはなぜ、シーグラスを使ったアクセサリーをつくろうと思ったのでしょうか。まずは、作家としてのこれまでの歩みを伺いました。
「最初は、革とビーズを組み合わせたラップブレス(革の紐の間にビーズを挟んで編んでいくアクセサリー)をつくっていたのですが、ラップブレスには必ず留め具となるボタンが必要なんです。元々海が好きで、シーグラスを集めるのが趣味だったので、これでボタンがつくれるのではないかとひらめいたのが始まりです。その後、独学でシルバーの製作を勉強するようになり、シーグラスとシルバーを組み合わせた現在のスタイルになりました」(武田さん)

シーグラスとシルバーを組み合わせたリング。シーグラスの形は唯一無二のため、すべてが一点ものです
独学で技術を研鑽
武田さんは、これまで一度もアクセサリー製作の学校などに通ったことはなく、基本的にすべて独学とのこと。それでこれだけの作品を生み出せるようになるとは、驚きです。
「最初のころはYouTubeを見ながら実験をくり返す、という感じだったのですが、たまたま知り合いに和彫りをする方がいらっしゃったので、時々お邪魔しては道具についてのお話を伺ったりして、あとはひたすら練習しました」(武田さん)

緻密なデザインが施された和彫りのバングル
和彫りとは、もとは日本刀の鍔(つば)に彫刻をするときに使われていた伝統的な技法です。ハワイアンジュエリーなどの洋彫りはタガネを押して彫るのに対し、和彫りはタガネを小槌で叩き、手前に引いて彫っていくという手法で、技術を駆使すれば、洋彫りよりも手のこんだ繊細な仕上がりになります。また、石留めも知り合いの職人から知識や情報を得て、独学で習得していったとのこと。モノづくりに賭ける熱い思いが引き寄せたような数々のご縁と、そこからひとつひとつ学んでいく真摯な姿勢、そして、たゆまぬ努力の積み重ねが、アクセサリー作家としての武田さんを育んできたのでしょう。

光を反射したときのきらめきが本当に美しい

シルバーを彫るときの彫刻台。「彫っているときは無心になります」と武田さん
シーグラスは“人間っぽい”
ショーケースを見てみると、バリエーションに富んだアクセサリーの数々が並んでいます。シーグラスはひとつとして同じものはないため、シーグラスとシルバーを組み合わせた作品もそれぞれに表情が異なり、思わずじっと見入ってしまいます。

シーグラスは自然にできた形をそのまま生かしています

波をイメージしたシルバーリングもとっても素敵
ここであらためて、武田さんにシーグラスの魅力を伺ってみました。
「シーグラスって、“人間っぽいな”と感じるんです。長い年月、海を旅して波に揉まれるほど角がとれて丸くなっていく様子が、歳を重ねると性格が丸くなる人間に似ているな、と。最初は尖っていても、旅を続けるうちに表情が変わっていくところや、一つひとつに個性があるところに魅力を感じます」(武田さん)

きれいな球状や縞模様のものなど、自然が創り出した造形美に思わず感動
確かに、そう考えると人間と共通するものがありますね。“みんなちがって、みんないい”。だからこそ、自分のフィーリングにピタッとマッチする一品に出会えたときの喜びはひとしお……Playacoloresのアクセサリーを選ぶときには、そんな楽しさもあります。

ピアスも左右アシンメトリーになっているのが楽しい
武田さんは、作品に使用するシーグラスは、主に神奈川県の湘南、葉山、逗子エリアで採取しています。ガラスは重いので、砂浜よりも砂利が溜まっている場所を掘ると出てくることが多いのだとか。
「九州の福岡の方へ行くと、緑のシーグラスがすごく多いんです。これはおそらく、韓国から流れてきたものではないかな、と。韓国のお酒のボトルって緑の瓶が多いので、たぶんその欠片が流れ着いたのではないかと思います」(武田さん)
なるほど、シーグラスにもそんな地域性があるとはおもしろいですね!
作品やワークショップを通して次世代に伝えたいこと
モノマチには2022年から参加していているPlayacolores。これまでディンプルアート(自動車のフロントガラス廃材を再利用した、環境に優しい透明絵の具を使うステンドグラス調のアート)などのワークショップを行ってきました。そして、近年はそうしたイベント以外でも、アップサイクルやSDGsをコンセプトにしたワークショップに力を入れています。

ディンプルアートの作品。乾くと自然に「ディンプル(えくぼ/さざ波)」模様が現れます
「シーグラスは元々は人工物であり、海に捨てられたごみですが、自然の力で形づくられ、それをアップサイクルすることで美しいものに生まれ変わります。作品やワークショップを通じて、“ごみが綺麗なものになる”ということに気づいたり、環境問題について考えるきっかけになってもらえたら……。海に落ちているごみのほとんどは、街から出ているといわれています。ですから、ビーチクリーンだけでなく、シティクリーンも大切なんだということを、ここ台東区から発信していきたいですね」(武田さん)

工房内には環境問題についてわかりやすく解説したボードも展示しています
美しいだけでなく、大切なメッセージも込められたシーグラスのアクセサリー。これを機に、私たちが暮らす地球の未来について、考えてみませんか。
Playacolores
東京都台東区台東1-33-12 舩山ビル201
TEL : 080-5195-4911
URL : https://www.playacolores.jp/
PHOTO : HANAE MIURA
TEXT : MIKI MATSUI

