簡単なのに本格的!「紙」を使った手作りキットのブランド「とじ郎倶楽部」

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株式会社小林 営業部ニュービジネス推進 城處剛さん 企画 武田かおりさん

ハードカバーの上製本が作れる製本キット

糊や刷毛といった特別な道具を使わずに簡単に自分で製本できたらーー。そんな願いを形にしてくれるのが「とじ郎倶楽部」。「紙」を使った手作りキットのブランドです。

本を綴ることができるから「とじ郎」。この楽しい名前を冠したブランドを展開している株式会社小林は、1948年の創業以来、ロールペーパーを中心に、洋紙や板紙、加工紙の卸や加工販売を手掛けてきました。

株式会社小林の本業はBtoB。レジ用のロールペーパーなどを手掛けている企業です。

BtoBのビジネスに徹してきた同社が、BtoCのブランド「とじ郎倶楽部」を立ち上げたのは2000年。きっかけは先々代の社長の趣味にあったといいます。

営業部ニュービジネス推進担当の城處剛さんと企画担当の武田かおりさん

「当時の社長の趣味が製本だったんです。かなり本格的に作っていましたが、このプロセスをもっと簡単にできたらと考え、製本キットを開発して販売にこぎつけました」(企画担当の武田かおりさん)

「手軽な製本」を追求しているだけに、「とじ郎倶楽部」の製本キットは実にわかりやすくシンプルです。どの製本キットも、表紙芯ボール、とじテープなど、製本に必要な材料はすべて含まれているオールインワンタイプ。必要なのはインクジェットプリンタでプリントして専用パーツでとじる工程だけ。サイズもA4サイズからハガキ(縦)サイズ、豆本サイズなど豊富に揃っています。

手のひらサイズの豆本が作れるキットもラインナップされています

そして、ここが肝心な点ですが、簡単でいながら仕上がりが実に本格的なのです。「とじ郎倶楽部」で作る本はハードカバーの上製本。厚紙の表紙で本をくるんで製本する上製本は、接着剤や針金や糸、リングなどで簡易にとじた並製本とは違い、独特の高級感が漂います。

実際に豆本を作ってもらいました。手際よく作業を進めていく武田さん

営業部ニュービジネス推進担当の城處剛さんは言います。

「ハードカバーや上製本は絶対に譲れない点ですね。それから簡便さも大事にしています。誰でも簡単に作れる点も『とじ郎倶楽部』に共通する特徴です」

みるみるうちに小さくて可愛いけれど本格派の豆本が完成していきます。

製本キットを販売するメーカーはたくさん出現しましたが、その多くが撤退しました。それは「とじ郎倶楽部」ほど本格かつ簡易な製本キットを実現できなかったからではないでしょうか。創意工夫にあふれたパーツを手順通りに合わせていけば高級感のある本ができあがる–。製本の喜びや達成感、ハンドメイドの楽しさを兼ね備えた「とじ郎倶楽部」の製本キットが製本ファンから根強い支持を得ている理由はそこにあります。

改良・改善を迅速に行う環境が整備されている

ショールームには本業の製品もずらり。株式会社小林の実力をうかがい知ることができる空間でもあります

同社の売上の大半はBtoBのサーマルロールをはじめとするロールペーパー、IDカードやポイントカード、非接触ICカードといったカードとカード発行システムの販売で占められていますが、「とじ郎倶楽部」を始め、本業とは異なる販路開拓にも熱心に取り組んでいます。

その一つが、先に紹介した製本キット。武田さんが開発に携わった「カードケース」も実にユニークなアイテムです。ATC(アーティストトレーディングカード)など2.5cm☓3.5cmサイズまでのカードを収納できるじゃばら型のカードケースを作るキットです。

カードを収納できるじゃばら型のカードケースが作れるなんて!様々な用途に使えそうです

完成品を見ると、作るのが難しそうに見えますが、糊や接着テープを用意する必要はありません。フタを閉めるためのマグネットやケース表面を保護するラミネートも付属していて、付属の白い用紙を使えばハサミさえも不要です。ケースの表面に好みのスタンプを押したり、手持ちの画材などを自由に飾れば、たちまちオリジナルの高級感あるカードケースが完成します。

さぞや試行錯誤を繰り返したに違いありません。武田さんにそう尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「製作しているのは深川にある工場ですが、本社と距離も近いですし、小さな会社で回しているので、意思の疎通が早いんです。これは弊社の得意技かもしれませんね」

ここを変えたいと思えば、すぐに改良できる環境が整備されている点は同社の大きなアドバンテージ。現場と本社スタッフとの円滑なコミュニケーション、フットワークの軽さ、持ち前の技術力が「とじ郎倶楽部」の世界を支えています。

手作りキットではありませんが、「紙自着テープ」も見逃せないシリーズです。

「製本キットはニッチなマーケット。本を自分で作りたいという方は一定数いますが、そこまで多いわけではないです。そこで、もっと多くの方に使ってもらえる商品を開拓しようと雑貨に着目しました。そうして投入したのが『紙自着テープ』です。もともとは工場で利用されていたものですが、先代が目をつけて、柄をつけパッケージングし販売に踏み切りました」(武田さん)

いろいろなシーンで活用できる自着テープ。一度、その効果を知ると「一家に一つ」の必需品になる!?

一見、マスキングテープのような「紙自着テープ」は、その名のとおり、自分で引っ付くテープです。ただし、テープの糊面同士は接着しても、他のものには付くことはありません。コード類をまとめて巻き付けたり、袋入りの食品に使ったり。カードやハガキといった紙類の結束、植物の茎や枝、つるを支柱に結びつけて固定したり、ラベルとして使うことも可能です。

もっとも、素晴らしい機能が言葉ではなかなか伝わらないのが同社の悩みのタネだとか。

「イベントで実演すると非常に受けがいいんです。面白い、使いたいという声を多数いただきますが、売り場にただ並べているだけではその効果が伝わりづらいので、『小ロット大冒険』(ワークショップをメインに、紙や革・紙加工・印刷・製本などを楽しむイベント)のようなクラフト好きの方が集まるイベントに出展しています。お客様に実際に手にとって見てもらい、商品の良さを体験してもらいたいですね」(城處さん)。

UX(ユーザーエクスペリエンス)の重要性が問われている時代です。「紙自着テープ」も、紙の手作りキット類もUXが生きる商品。その意味で「とじ郎倶楽部」のラインナップは極めて現代的であり、高いポテンシャルを秘めた商品群であることは確かです。

箔押し機の機械を使った企画も投入したい

「とじ郎倶楽部」のモノマチ歴は長く、なんと初回の2011年から参加しています。

「佐竹商店街の方から声をかけていただき、地域のつながりを大事にしたいと参加を決めました。ただし、最初の頃は社内でも『モノマチって何?』と理解していない人もいましたね(笑)」(武田さん)

2023年のモノマチでは2つのコラボに挑戦しました。一つは、望月印刷と組んだ豆本キット。望月印刷がデザイン・印刷を手掛けた豆本用の表紙用紙や本文用紙と「手づくり豆本kit」のパーツを使って、モノマチ限定のキュートな豆本を完成させる試みです。

「豆本といってもぴんとこない方が多いのですが、やはり実物があるとできあがりをイメージしやすいんでしょうね。製本のハードルが下がったコラボだったと思います」(城處さん)

もう一つは、「“テキンで印刷”可愛いタグ型メモ帳」。事前に色部分が印刷されたタグ型のチップボードを使い、テキン(手動式の平圧印刷式の活版印刷機)を使ってスミ部分の重ね刷りを体験できるワークショップです。中身のメモ帳の用紙は自社で8種類ほど用意して、ビュッフェ形式で選んでもらう形にしました。

モノマチ2023のワークショップはこんなメモを作り、大好評を得ました

「テキンは深川にある他社さんに協力を仰ぎました。印刷のオペレーターに来ていただいて開催しましたが、とても簡単にできるので大好評でした。今度は、以前社内で使っていた箔押しの機械を使ったワークショップも実現させたいと考えています」

箔押しの機械を使って新たなチャレンジも構想中とか。次回のモノマチに乞うご期待。

お二人に話をうかがい、改めて実感したのが「とじ郎倶楽部」にはワクワクする楽しい商品が充実していること。スタンプアートにぴったりなベーシックペーパーのシリーズもあれば、ピースごとにバラして寄せ書きすることができる「寄せ書きパズル」もあります。まるでとびだす絵本のようにカードがぱっと開く「ポップアップタグ」もあります。

楽しいアイデアを具現化した「ポップアップタグ」。メッセージが目に飛び込んできます

この商品開発力こそ「とじ郎倶楽部」の最大の強み。イラストレーターやグラフィックデザイナーが手掛けるデザインペーパー、薄く漉いた革、リボン、コードなどモノマチエリアの素材や技術と組み合わせれば、その強みはさらにパワーアップしそうです。

 

株式会社小林 とじ郎倶楽部
東京都台東区鳥越2丁目10−4 小林ビル 3階
TEL : 03-5833-5893
URL : https://www.tojiro.co.jp/

Photo by Hanae Miura
Text by Fukiko Mitamura

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