雑貨たちが奏でる音色で 日々の暮らしをたのしく、豊かに

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BRASS 大井谷 (おおいたに たけし)さん

2011年秋の第2回からモノマチに参加している「BRASS」は、オリジナル商品も取り揃える小さな雑貨店。実は、小売業とはまったく別の事業も同時にこなしている、ちょっぴり個性派の存在なのです。その素顔に迫ってみましょう。

モノマチとの出会いが雑貨店を始めるきっかけに

デザイナーズビレッジのほど近くにひっそりと佇む「BRASS」は、ステーショナリーと生活雑貨を扱うお店です。レンガの外壁に、温かみのあるブラウンのひさし。営業時間中は入口の扉が開け放たれており、訪れる人をオープンマインドで迎え入れてくれます。

店名のBRASSは、ブラスバンドに由来するもの。いろいろな楽器が集まって吹奏楽を奏でるように、心をほっとさせてくれるような雑貨を集め、日々の暮らしにささやかな喜びやたのしさを提供できたら……そんな想いが込められています。

実は、BRASSにはもう1つの顔があり、元々はブランドネーム・タグの作成やプライスタグへのバーコード印字などを専門で請け負う会社として創業しました。

品質ネームや洗濯ネーム用の印字機

専用ソフトで入力した文字やマークをナイロンテープに印字し、1枚ずつカットした状態で出てきます

プライスタグを作成するタグプリンター

そんな会社がなぜ、雑貨店を開くことになったのか──きっかけは、モノマチとの出会いでした。

「このエリアには、クライアントである仕入れ業者様が多く集まっていることから、新御徒町に事務所を構えたのですが、当時、隣にあったcarmineさんからモノマチというイベントがあることを教えていただきました。モノづくりを通して街の魅力を伝えるという趣旨にとても共感し、自分たちも参加したいなと思ったのですが、どんな形態で参加したらいいんだろう、と。あれこれ考えた結果、事務所の一角をお店にしてみようかな、という思いつきから雑貨店を始めました」と、代表取締役の大井谷猛さんは語ります。前職で印刷関係の仕事をしていた大井谷さんは、紙関連の豊富な知識を生かし、レターバッドやメッセージカードといった紙製品を中心に仕入れて販売。こうして小さな雑貨店「BRASS」が誕生したのです。

挑戦したからこそ見えてきた新たな世界観

BRASSの店頭に並ぶのは、大井谷さんやスタッフが直観で、「いいな」「おもしろいな」と心動かされたアイテムたち。さりげない中にも個性やこだわりが感じられる、魅力的な雑貨を取り揃えています。

当初は、既存の製品を仕入れて販売するだけでしたが、それだけではおもしろくないからと、2018年にオリジナルブランド「BRASS THREE DOTS」を設立。紙・布・革という3つの素材を柱に、企画からサンプルアップ、製造、販売までを一貫して手掛けています。それまで得意分野としていた紙製品だけにとどまらず、布と革という新素材を取り入れた新たなチャレンジでした。

「モノマチの参加店さんの中には自社ブランドをやっている方が多いので、そうしたみなさんの活動に背中を後押しされた部分はありましたね」(大井谷さん)

そうしてオリジナルブランドの製品づくりに取り組むこととなったBRASS。素材ごとに自分たちの手でつくれそうなアイテムを絞り込み、デザインを考え、素材を探し、形にしていく。ゼロから行うモノづくりは大きなやりがいがある一方で、想定外の壁にぶつかることもありました。なかでも苦労したのが革製品だった、と大井谷さんは振り返ります。

「僕がこれまで関わってきた紙の世界と革の世界とでは、考え方も違えば、商習慣もまったく違う。たとえば、使いたいと思った革素材でサンプルをつくって、数カ月後、いざ商品をつくろうとしたときにはその素材の在庫がない、あるいは廃盤になってしまった、ということが平気でおこるんです。となると、また革を探すところからやり直さなければいけない。また、原価計算方法も紙とはまったく違います。紙であれば、1枚から製品何個分とれるかというのがシンプルに計算できますが、革はロスになる部分もすごく多く、そこまで想定して仕入れや原価計算をしないといけないんです。そうした基本的な知識がまったくなかったので、そんな状態で革に手を出してはいけないんだな、と深く反省しました(苦笑)。でも、そんな経験をしたおかげで、革職人さんって本当にすごいな、とあらためて感じることができました」(大井谷さん)

未知の世界にチャレンジして、思わぬ洗礼を受けた大井谷さんでしたが、そこで匙を投げないのがすばらしいところ。革を使って自分たちの手でオリジナルブランドの製品をつくりたい、という熱い想いを胸に、3種類の動物をかたどったペンスタンドと、シンプルなメモパッドケースを完成させました。

少しツヤのあるレザーを使用したペンスタンド。ブタ、ネコ、ウマの3型で、ナチュラル、ブラウン、ブラックの3色あります

「素材が変わると業種が変わるので、自分がこれまでもっていたものとは別の知識や常識、考え方がある、ということを身をもって知りましたね。そういう世界に触れたり、自分と違う意見を言ってもらったりするのはとてもいい刺激になったし、視野が広がりました」(大井谷さん)

ペン差しもついた、シンプルで機能的なメモパッドケース。使い込むほどに革本来のエイジングが楽しめます

作り手の想いがこもった、暮らしに彩りを添えるアイテムに注目

BRASSが雑貨店を始めて今年の秋で丸11年。商品のラインナップも年々充実してきました。たとえば、紙質に徹底してこだわったというレターパッドは、一見シンプルながら、よく見るとレイドと呼ばれる地模様が入っていて、上品な雰囲気を醸し出しています。

アニマルのワンポイント柄が入ったレターセット。便箋に使用しているのは、“OKミューズガリバーリラ”という特殊紙で、高級感が感じられます

イラストレーターのAI IUCHIさんとコラボしたグリーティングカードやポチ袋は、クスッと笑えるようなデザインが秀逸で、贈る人も贈られた人も思わず笑顔になってしまうこと間違いなし。バッグやTシャツなどの布製品は、手に持ったときや肌に直接触れたときの素材感が実に心地よく、長く愛用したくなる逸品揃いです。

思わず笑顔がこぼれてしまう、AI IUCHIさんのイラストをあしらったポチ袋

そんな雑貨店としての一面に加え、紙や印刷に精通していることも忘れてはなりません。紙製の資材は小ロットでの制作も可能で、豊富な知識をもとに要望や予算に合わせて最適な提案をしてもらえるというのは、なんとも心強い限りです。

雑貨を愛する方たち、そして、モノづくりに携わる方たちとBRASSとの出会いによってステキな音色を奏でることができたら、日々の暮らしが今よりももっと豊かになることでしょう。

BRASS
東京都台東区小島2-7-7 滝沢ビル1階
TEL:03-5829-6942 ​
URL : https://www.brass-crp.co.jp/

Text by Miki Matsui

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