建築のおもしろさを伝えたい

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川島鈴鹿建築計画 鈴鹿美穂さん

見られながら仕事をする

「川島鈴鹿建築計画」は、鈴鹿美穂さんと川島茂さんが共同主宰する建築設計事務所。一時は兵庫県に住んでいましたが、仕事でお茶の水に通うことになったのを機に東京に戻ってきました。

「利便性を考え、お茶の水まで自転車で通える距離にと思い、部屋を探しに来たら、ちょうどその日が鳥越祭りだったんです。目の前を本社神輿がド~ッと通り過ぎて行って、『なんだ、これは!?』ってなって(笑)。そっか、ここは江戸なんだ。せっかくなら江戸に住もうよ、ということで、このまちに住むことに決めました」と鈴鹿さんは振り返ります。

川島鈴鹿建築計画の鈴鹿美穂さん

3年ほど三筋のマンションに住んだ後、現在の小島2丁目に事務所兼自邸を建築しました。1階の事務所は、あえて仕事をする自分たちの姿を見せることを意識しています。

「このまちは、道路に対して“開いて”生活しているな、という印象があって。外から見えるところで仕事をしていたり、道端でおしゃべりしたりしていて、そういう雰囲気に下町らしい魅力を感じました。なので、うちとそとの境目があいまいになるようなつくりかたを意識しました」(鈴鹿さん)

外観と表札はシンプルで控えめ

シンプルなコンクリートのボックスに、1階は大きなガラス窓から中の様子が見えるという、なんともユニークな外観。好奇心をそそられるこの建物がきっかけとなり、仕事や取材の依頼を受けたこともあるそうです。

大きな開口が事務所と外のつながりを演出しています

“建築のおもしろさを体験する”ワークショップ

現在の場所に拠点を移し、ちょうど20年となる川島鈴鹿建築計画。モノマチにも第2回から第11回まで連続で参加し、趣向を凝らしたワークショップを開催してきました。テーマは、“建築のおもしろさを体験する”。ときには仕事で知りあった施工会社、職人、建材メーカーなどに協力してもらい、建築に興味をもつきっかけになるようなワークショップをやってきました。

「たとえば今でも話題になるのは、鉄骨屋さんの協力でできた、トライアングルをつくるワークショップですね。コンクリートの中には鉄筋が入っていますが、その鉄筋を切る体験、熱を入れて曲げる体験、そして溶接。これは資格が必要なので、職人さんが溶接する様子を見学してもらい、やすりをかけ、最後に革の紐をつけてもらって完成。200本用意した鉄筋はすべてトライアングルになり、つくった人たちがみんなこれを鳴らしながらまちを歩くという、なかなかおもしろい光景でした(笑)」(鈴鹿さん)

第7回モノマチで行ったワークショップ「鉄は熱いうちに曲げて」。鉄筋をバーナーであぶって曲げる、というめったにできない体験が大好評

さらに特筆すべきなのが、川島鈴鹿建築計画では毎回新しいワークショップを企画している、ということ。2度同じものはやりません。1年がかりで準備することもあったそうで、そのプロ根性とアイデアの豊富さには目を見張ります。

建材サンプルを使った「けんざいフレームアート」や、模型のワークショップ「手のひらに乗る小さなまち」も

第9回モノマチでは、5社でコラボした企画も。第11回では金井畳店とのコラボで、床材を使ったトレイをつくりました

そんなモノマチでの活動が目に留まり、様々な法人や団体から声がかかって、ワークショップの機会はさらに拡大しました。子ども向け職業体験プログラム「建築家体験」もそのひとつです。

「“上野動物園のサル山を設計する”というテーマで、小中学生を対象にワークショップを行いました。どういうかたちの山にしたらサルがおもしろく見えるか、サルが逃げないようにするには、水浴びできるところがほしいかも、というように、観客と飼育者、それにサルの視点で考え、粘土でサル山をつくります。最後に、それを動物園の模型にはめ込んで、どんなところを工夫したかをプレゼンテーションする、というところまでやります。ここまでやると本当に“建築家”体験です。小学生には難問ですが、みんながんばってくれます」(鈴鹿さん)

建築家体験「上野動物園のサル山を設計する」プレゼンテーションの場面

平和を願うチャリティイベントを主催

そしていま、もう1つ鈴鹿さんが力を注いでいる活動があります。それは、ウクライナの飼育動物保護を支援する活動です。ロシアによるウクライナ侵攻以来、ペットや家畜を残して避難しなければならない実情をニュースやSNSで知り、自身も愛犬「こんすけ」君と暮らしている鈴鹿さんは、思いを同じくする小島公園の犬友SHUNNO KITCHENの二部桜子さんと共同主催でチャリティイベントを始めることにしました。

鈴鹿さんの愛犬こんすけ君

2023年4月におかちまちパンダ広場で開催したチャリティイベント「Pray for UKRAINE ANIMALS Vol.4」の様子

「愛犬と一緒に参加できるマルシェとフリーマーケットを開催し、売上金の一部と寄付をウクライナの動物保護団体に送る、という活動です。初回は、侵攻後すぐの2022年3月に事務所の前で開催し、2回目以降はJR御徒町駅前のおかちまちパンダ広場をお借りして開催しています。モノマチをはじめとするワークショップも、このチャリティイベントも、これはと思ったことは行動に移しちゃう発作的な私ですが、このイベントは経験豊富な二部さんがいるから実現できたし、テントなどの備品はモノマチ関係の方から貸していただいたりと、台東区の横のつながりにずいぶん助けていただいています」(鈴鹿さん)

イラストレーターが愛犬の似顔絵を描いてくれるブースも

イベント会場にはメッセージツリーも設置され、メッセージはウクライナへ届けられました

人との縁を大切にし、フットワークの軽さと人並はずれた行動力で、思いをかたちにしていく鈴鹿さんのお話を伺っていると、こちらまで勇気と元気をもらえそうです。

なお、チャリティイベントに関する情報は、「EAST TOKYO PACKS」のInstagram「@easttokyopacks」をチェックしてみてください。

川島鈴鹿建築計画
東京都台東区小島2-3-1
TEL:03-3851-3385
URL: http://kawashimasuzuka.com

Photo by Hanae Miura
Text by Miki Matsui

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