誰が来ても必ず気になるモノがある! オリジナリティの高い手芸資材の超専門店
ワールデザイン 店主 中西景子さん
ワールドワイドでデザイン性の高いラインナップ
インド刺繍リボン、タッセルテープ、レース、フェルトボール、ボタンパーツ。それぞれの個性をたっぷりとアピールしながら店内にぎっしりと並ぶ商品の数々。浅草橋にあるワールデザインは見ているだけで高揚感高まる手芸用品の専門店です。
ワールデザインを英語で表記するとWORLDESIGN。WORLD(世界)とDESGIN(デザイン)の2つの言葉を合わせた店名にふさわしく、ラインナップはまさにワールドワイドでデザイン性も豊か。フェアトレードを掲げ、インド、中国、ネパールなどのアジア、フランスやドイツ、イタリア、オーストリアなどのヨーロッパ、さらには中東やトルコなど世界18カ国で生まれた品々が満ちています。
生地やレザーパーツ、ボタン類など、高品質な日本製品も多数。手芸用品のみならず、簡単に作れるオリジナルキットやアクセサリー、バッグ類が充実しているのも同店の大きな魅力でしょう。
比類なき行動力とバイタリティで活路を拓く
「どなたが来店されても必ず気になるモノがある店にしたい」
店主の中西景子さんのこの言葉通り、ワールデザインはハンドメイド派もそうでない人にも楽しめる店舗。心惹かれるアイテムを満載した胸踊る空間ははたしてどのようにして実現したのでしょう。
その道のりが物語るのは、中西さんの比類なき行動力とバイタリティでした。大学時代に問屋街・馬喰横山にあるアパレル卸の会社でアルバイトを始めた中西さんは半年で正社員となり、バイヤーとしてインドやネパール、インドネシアにある工場や農園を飛び回りました。3年後の2006年には独立し、自身でアパレルの会社「makiras」を立ち上げます。
BtoBとして卸先を増やすだけではなく、BtoCにも乗り出し、全国の大型商業施設へのイベントやマルシェなどへの出店を重ね、ラインナップもアパレルから小物類へと拡大。ECにも乗り出して、2018年には法人化も果たしました。
「子どもを抱えて結婚10年目で離婚することになったので、なにがなんでも食べていかなくてはと決意し、個人事業主を脱して法人化に踏み切りました。ワールデザインが誕生したのはこのときです。卸やオンラインショップの拠点かつ小売店として、取引先とも近くて、地下1階を倉庫としても活用できる浅草橋の物件に店を構えました」
コロナ禍は臨機応変な対応で乗り切り、品揃えはさらに進化
バイヤー時代に開拓したインドやネパールなどの取引先ネットワークを活かしてオリジナル商品も増やし、順調に事業を伸ばしていた2020年。同店は大きな危機に見舞われました。
世界中の産業と経済に大きなダメージをもたらしたコロナ禍です。しかし、この危機的状況も何のその。中西さんの行動力は災禍を果敢に乗り切りました。コロナでサプライチェーンは大打撃を受けましたが、世界全体の取引が一斉にストップしたわけではありません。ロックダウンの時期は国によって異なりました。いま中国がだめならタイに向かおう。タイがだめならまた別の国を探せばいい。活路を求めて中西さんはフットワーク軽く海外を飛び回り、商品確保に努めたのです。
とはいえ、海外生産にはトラブルがつきもの。中西さんは常に現地の状況を確認しながら、臨機応変に対応をしています。サンプルが良好な仕上がりだったとしても、たとえどんなに長く付き合っている取引先であっても、チェックは欠かせません。
「常にどこかの国でトラブルがあります(笑)。つい先日も、ある商品について別の工場に全変えしたところです。『いま作っています』という報告があったのに、実際はできていなかったんですよ。商品のベースの色がまったく違っていたということも珍しくありません。だから、基本的には全面的に信用せずに、常にプランBを用意しています。客注の商品についてはビデオで現場を確認し、縫製や仕上がりをチェックしていますね」
時期によって生産にムラが出るのも「海外生産あるある」でしょう。旧正月の前の中国や、10月〜11月に大きなお祭りが開催されるインドではどうしても生産が滞るため、中西さんはあらかじめイベントを考慮した生産計画を立てています。
海外生産をする上ではコピー商品の出現も深刻な問題の一つ。オリジナルデザインの商品を作ると、すぐにデザインをパクった商品が出回るからです。しかし、中西さんは「パクリを止める手立てははない」と淡々と語ります。
「翌月にはパクられて3ヶ月後には市場に出回ってします。これはもう仕方がないですね」
パクリ商品、コピー商品は本来はあってはないらないモノですが、現実問題として全面的に回避することは難しい。であればそうした未来を織り込み済みで、中西さんは商品を充実させてきました。
「コロナ禍ではマスクの需要が急増したことも幸いしました。マスクの生地や装飾用のレース、リボンなどの販売を強化して、インスタにはマスクの作品例をアップしました」
需要があるとみなせば、そこにフォーカスし商品力を強化するーー。ピンチをある意味、チャンスに変えながらワールデザインはより強靭に進化を遂げていきました。当初の頃から比べると、棚も増え、商品点数は約5倍に。リボン詰め放題、5000円以上お買い上げ方の方が挑戦できるクレーンゲームなど、楽しく可愛い商品や企画も導入されています。「たくさん商品がありすぎて選びきれない」「楽しく迷ってしまう」というお客様が多いのはこうした企業努力のたまものなのです。
ゼロからイチを作り出す
最近、とみに充実化しているのがオリジナルキットのシリーズです。キーホルダーに始まって、ピアス・イアリング、ブローチ・ヘアアクセサリー、ショルダーストラップキットなど、オリジナルキットは現在10種類。作るアイテムによって多少異なりますが、別途買い求める必要があるのは基本的には好みのリボンや針と糸、それからハサミやアイロンなど。自宅にすでにあるような道具で完成させられるので、手間はかからず、手芸が苦手な人、面倒くさいという人でも気軽に作れます。
最新アイテムの「丸底巾着キット」は丸型コットン巾着からDカン、布用両面テープ150m分入り。各自で好きなリボンやレースタッセルフリンジを選べば、30分ほどでできあがり。縫製せずに両面テープだけで仕上げているとは到底思えない完成度の高い巾着が誕生します。
このオリジナルキットは中西さんの得意技がもっとも発揮されたカテゴリーかもしれません。
「ゼロからイチを作るのは大変ですよね。そのプロセスはこちらで用意して、お客様にはイチをどうするかを楽しんでもらいたい。実は私、ゼロからイチを作り出すのが趣味なんです。高校では『おべべ愛好会』という同好会を立ち上げたこともあります。会長をつとめて文化祭ではファッションショーも開きました。だからミシンは使えますが、手芸は趣味というほとではない(笑)。いまはハンドメイドが得意なスタッフも揃っているので、イチを提供するこのカテゴリーはさらに大事に育てていきたいと思っています」
古民家をリノベーションして店舗に
モノマチに参加したのは2022年から。参加2回目となる2024年はショルダーストラップ、ツーウェイコサージュやヘアアクセサリー、子ども向けのポーチデコレーションやヘアゴムなどのワークショップのほか、くるみボタン工房 MiSuZuYaともコラボ。大好評を得ました。
「モノマチにはずっと出たいと思っていました。お客様にも『モノマチには出ないの?』とよく聞かれていましたが、私一人で店を回していたので、ずっと参加できないままだったんです。ようやく2年前にスタッフが入って念願がかないました。参加して感じたのが、けっこうなマニアの方が多く、ちょっと大げさですが殺気がありますね。スタッフはもともとがモノマチ好きなので『参加するとモノマチを見て回れない』と半べそをかいていますが(笑)、3日間の開催期間を通してお客様と仲良く慣れるのは得難いメリットです」
現在、スタッフの数は中西さんを入れて5人。うち2人は三重県大台町に在住し、もう一つのショップ「bistarai」(ビスタレイ)の運営に携わっています。
「バナーデザインをしていた外注スタッフが大台町周辺に住んでいたことがbistarai設立のきっかけになりました。何度も現地を訪れるうちに、こんな素敵な場所が限界集落なんてもったいないなあと思ったんです。そこで近隣の空き家を探して持ち主を地主さんに探し出してもらい、賃貸で74年の古民家をリノベーションして店舗にしました。その彼女は退職してしまいましたが、現在は生まれも育ちも三重県の2人のスタッフが育児と両立してお店を切り盛りしています」
今年に入ってから、ワールデザインはハンドメイド品やアンティークを扱うアメリカの巨大ECサイト、Etsy(エッツィ)にも出店を果たしました。素材博、台東ファッションZAKKA祭、minneのハンドメイドマーケットなど一般客向けのイベントのほか、BtoBの台東区産業フェアへの出店も続いています。頼もしいスタッフの参入でワークショップやインスタライブも頻繁に開催されるようになりました。
手芸用品を軸に品揃えを拡大し、小ロットから大ロットまで、別注オーダーなど卸にも力を入れているワールデザイン。モノマチでもすっかり欠かせない存在になった同店はこれからも中西さんのパワーを原動力に、「ハンドメイド派にも、そうでない人にも気になるお店」としての輝きを増していくでしょう。
株式会社WORLDESIGN(ワールデザイン)
東京都台東区浅草橋3-34-3
TEL:03-6883-8329
URL: https://www.tamabiyoukagaku.com/
PHOTO : HANAE MIURA
TEXT : FUKIKO MITAMURA