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クリエイティブにリユース活動を推進! 大人のためのアップサイクルなモノづくりバー

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お酒を飲みながら廃材を使ったモノづくりを楽しめる空間

SDGs、持続可能な社会、リユース、リサイクル、アップサイクル。こうした言葉は今では当たり前のように私たちの暮らしに浸透しています。

でも、なんとなく「良いことだとはわかるけどどう取り入れていいのかわからない」というイメージを持つ方もまだ多いのではないでしょうか。そうした方にぜひ足を運び、体験してもらいたい場所がモノマチエリアにはあります。誰でも楽しくアップサイクル作品がつくれる大人のためのモノづくりバー「 Rinne.bar(リンネバー)」です。

レトロなガラス戸が印象的なRinne.bar。ウエルカムな空気に満ちています。

やや年季が入った建物のレトロなガラス戸を開けてみましょう。入口でお客様を出迎えてくれるのは、アーティストの富田菜摘さんが制作した大きなキリン。迫力がありつつ、その眼差しが温かい。よく見ると、マイクやレンズ、扇風機などのスクラップ品が巧みに使われています。

スクラップや廃材で作られたキリンが同店のシンボル!なんともキュートなアート作品です。

売り場の中央にでんと構えているワークショップ用の大きなテーブルは端材を使って仕上げたもの。中には、カンナや金槌、ペンチなどの大工道具が埋まっています。

中央のテーブルをよく見てみると中には工具類が!こうした仕掛けもRinne.barの楽しさの一つ。

キリンを構成するスクラップアイテム、テーブルから顔をのぞかせる道具類、組み合わされた端材たちの美しいこと。不要になったモノがこんな風に息を吹き返すことができるんだ。そう教えてくれる柔らかな空間が広がっています。

モノに対する意識や見方ががらっと変わる体験

モノがぎっしりと詰まっていますが、居心地が良くて長居できそう。温かなスペースです。

同店を運営するのは2019年に創業した株式会社RINNE。日本のもったいない精神を輪廻転生ととらえた発想から名付けられました。モノを循環させ、新しい命を吹き込んでクリエイティブにリユースする活動を推進して社会に貢献しよう。そんなビジョンを掲げて誕生したスタートアップ企業です。

同社の代表をつとめる小島幸代さんはクラウドファンディングで創業支援金を集め、台東区小島町の物件を借り、廃材を使って仲間でDIYを施し「Rinne.bar」を創り上げました。しかし、オープンしたのは2020年2月。世界全体がコロナ禍に見舞われる直前でした。

プレスリリースを打つこともできず、多くの人が外出を控える中、苦戦が予想されましたが、SDGsをテーマにした雑誌「ソトコト」を始め30以上のメディアが同店に注目し、認知度アップに貢献しました。

barだから奥の店にはアルコールのボトルがずらり。もちろんソフトドリンクも用意されています。

お酒を飲みながらカジュアルに廃材を使ったモノづくりを楽しめる。料理を選ぶようにメニューの中から作るモノと材料を選び、各自が自由に自分のセンスや好みを活かしてモノづくりができる。同店のコンセプト「クリエイティブ・リユース」が多くの人の共感を呼び、ファンを生んでいったのです。

現在、同店のアシスタントプロデューサーをつとめる山浦あかりさんもその一人。2022年に一人の客として来店し、インターンを経て同社に入社しました。

アシスタントプロデューサーをつとめる山浦あかりさん。元は顧客の一人でした。

「当時は学生として福祉を勉強していて、地域コミュニティに関心がありました。『ソトコト』の記事を見てお店に来てみたんですが、要らなくなったモノに命を吹き込むモノづくりのプロセスが本当に楽しくて、モノに対する意識や見方ががらっと変わりましたね。小さいときによくトイレットペーパーの芯や段ボールを使ってよくモノづくりをしていたんですが、そのときのワクワクとした気持ちを取り戻せたように感じました」

完成品には一つとして同じモノはない

ここで「Rinne.bar」のメニューをご紹介しましょう。

12種類ものメニューが揃ったワークショップ。あなたの作りたいモノが必ずあるはず。

ワークショップは、レザーチェーン、アクセサリー、ボウタイ、コインケース、カードケースなど12種類。その中から1つを選んでワンドリンクがついてくるプロジェクトは4400円。ワークショップ1種類と2時間のフリードリンクがつくプロジェクトは5500円(ともに税込)。制作時間はおおよそ1時間〜2時間。作りたいモノを決め、クラフトワインやジン、レモンサワーやノンアルドリンクを注文してテーブルについたら、さあモノづくりのスタートです。

材料は数限りなくある、といっても決して大げさではありません。端切れ、ビーズ、ボタン、糸、毛糸。革の端材、金属のパーツ。素材の種類も豊富ならテクスチャーや色もバラエティに富んでいます。もちろん道具にも事欠きません。ハサミ、金槌、接着剤。モノづくりに必要なツールはしっかりと揃っています。

材料もよりどりみどり。自ら選んだ素材と自らのセンスで個性的なモノづくりを楽しんで!

「モノづくりの経験があってもなくても関係ありません。お酒を飲みながら多少酔っ払って作っていただいても大丈夫。みなさん思い思いに材料を選んで、ああでもないこうでもないとモノづくりを楽しまれています」

一番人気のKOPPA kunくん。何者でもないけれど何者にもなれそうな奥行きが魅力です。

ワークショップの中で一番人気があるのは、「KOPPA kun」(コッパクン)。家や家具をつくる時に発生する半端な木材・木っ端を使って仕上げます。

「人気なのは一番自由度が高いからかもしれませんね。完成品には一つとして同じモノはありません」

「KOPPA kun」は何かに役立つわけでもなければ、便利な機能がついているわけでもありません。言ってしまえばただの人形です。だからこそ好きなように作れる。想像力と創造力を思う存分に発揮できます。完成させた後にはひときわ愛着がわきそうです。

先生はいない、作るペースもそれぞれでいい

客として利用した後、入社に至った山浦さんのエピソードに見るように、同店はただモノを循環させているのではなく、人とモノとのつながりをアップデートし深めています。

例えばこんなことがあったそうです。

「コロナ禍でIT企業に勤めているという男性が一人で来店されました。最初はただドリンクを飲んでいるだけでしたが、そのうちスタッフが素材の整理をしているときにお手伝いいただくようになったんです。やがてモノづくりにも挑戦されるようになり、穴が空いてしまったけれど捨てずに取っておいた洋服を持ってきてご自分でアレンジされるまでになりました。いまではお店のワークショップである毛糸のコトリを楽しそうに作成されています」

「 Rinne.bar」での体験を経て、モノと自分との関係性が変わった好例です。同店に先生は存在しません。作るペースも自由です。さっさと仕上げてもいいし、ゆっくり時間をかけてもいい。サイズを変えたり、余白を作るのも各自の自由。そこに正解はありません。

店内には端材をセットした商品もあります。色別にまとめれた素材でさあ何を作りますか?

必要なのは創造力だけ。不用品だと思っていたモノが実は持続可能なモノであることに気づき、それぞれが愛着が持てるナニモノかにクリエイティブに変えていく。その体験こそが「Rinne.bar」が追求するアップサイクルの本質です。

ファンには外国人のお客様も珍しくありません。同店では海外に向けて、インスタでは着物地を使ったモノづくりをバイリンガルで発信。ホームページは英語も表記し、近隣のホテルにはショップカードを置いています。モノづくりの楽しさに国境はないからです。

店の奥にはスタッフがこれまで作ったモノやハンドメイド作品が並びます。こちらのスペースも見逃さないで。

「サステナブルに旅をするための情報を掲載している『東京サステナブル・シティ・ガイドブック』で紹介された影響もありますね。『バー』でグーグル検索をして、お酒を飲める場所だと思って来店される方もいらっしゃいます(笑)。でも店の趣旨をお話すると、『なんだ、そうなんだ』と気軽にワークショップに参加されることが多いんですよ」

お酒を飲むだけでもOK。でもモノづくりしたらもっと楽しくなる!ドリンクはクラフト系が中心です。

お酒を目当てに来てもOK。お酒だけ飲んでも構わない。でも、すぐそばで廃材を使ったモノづくりに楽しそうに興じている客がいると自分もやってみたくなる。そんな気分になりそうです。アップサイクルなモノづくりのハードルが一気に下がるのは、同店がバー業態だからこそかもしれません。

企業研修を経てアップサイクルが自分ごとになる

同社の事業は大きく3つに分けられます。一つは「Rinne.bar」の運営。もう一つは企業や教育機関とのコラボ。最後がイベントへの出店です。もう一つは企業や教育研修。最後が商品、サービス開発です。

持続可能性を重視し、社内にサステナビリティ推進室を置く企業は着実に増えていますが、具体的な取り組み内容に悩める企業が多いのもまた事実。サステナビリティをどのように実践すればいいのか。そんな企業の問題意識に応えているのが同社による企業研修です。

「知識先行ではなく、とにかくモノに触って手を動かしてもらっています。最初はみなさん緊張されますが、だんだん素材選びに熱が入って、『ボンドで手がベタベタになっちゃった』と楽しそうにモノづくりをされてますね。『え?こんな素材を選ぶんだ?』『こんな風に素材を組みわせてモノを作る人だったんだ』と思わぬ一面が見られる場面も多いです。チームビルディングにも貢献できていると思います」

研修でワークショップに参加した後、家族連れで来店する。そんなケースも数多くあるそうです。仕事だからと参加してみたら想像以上の楽しさだった。だったら今度は家族とその楽しさをいっしょに味わいたい。これぞアップサイクルが自分ごとになった瞬間です。

目指すはモノが豊かに循環していく社会

モノマチには2022年から参加しました。

「モノマチのインフォメーションセンターが置いてある台東デザイナーズビレッジの近くですし、コロナ禍で地域と関わる機会がなかったので参加を決めました。参加してみて、出店者や地域とのつながりが広がっていくことを実感しましたね。ワークショップは常時やっていますが、モノマチでは素材詰め放題を実施して大人気。2回目、3回目と回を重ねるごとにリピーターが増えてきているように思います。モノマチで店のことを知り、別のイベントにも来てくださる方もいらっしゃいますよ」

バーでのワークショップ、企業研修、モノマチ、イベント。同社はさまざまな機会を駆使して地域との接点を広げ、アップサイクルなモノづくりの楽しさを知る層を増やしています。

「将来的には企業や家庭から不要とされるモノを皆が持ち寄ることができるクリエイティブ・リユースセンターをつくりたいと考えています」と山浦さん。Rinne.bar は5周年を迎える2025年でいったん営業を終了し次のステージに向かうとか。現在、新たな挑戦を支えるサポーターをクラウドファンディングにて募集しています(2025年1月末まで募集)。
https://readyfor.jp/projects/rinnebar2025

同社が目指しているのは、誰かのゴミが誰かの素材となり、宝物になり、愛してやまないモノになり得るかもしれない、モノが豊かに循環していく社会。新ステージで目標により近づいていくことは間違いありません。

Rinne.bar
東京都台東区小島2-21-2 根岸ビル
TEL:050-6875-0500
URL:https://www.rinne.earth/
PHOTO : HANAE MIURA
TEXT : FUKIKO MITAMURA

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