商品を通して素材の魅力、手仕事のすばらしさ、ものを大切にする気持ちを伝えたい

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蔵前街歩きリュックの店 MESSAGE

小川太一郎さん

従来の課題をクリアし、機能性とデザイン性の両立を目指して

ひと口にリュックといっても、従来のカジュアルなものからビジネス仕様のもの、コンパクトなサイズのものまで、今はバリエーションも豊富になっています。そうしたなか、四半世紀以上にわたり“街歩き”をテーマにしたリュックを製作しているのが「蔵前街歩きリュックの店 MESSAGE」です。

お店は蔵前小学校のすぐ近くにあります

元々は、戦後間もない1947(昭和22)年に「小川一正商店」として創業。和装小物が主流だった時代にヨーロッパスタイルのハンドバッグを販売し、人気を博しました。時代は流れ、1984(昭和59)年にオリジナルブランド「MESSAGE」を立ち上げ、企画・開発・製造・品質管理までを一貫して行う業態へと転換。それから14年の時を経て、1998年に「蔵前街歩きリュック」が誕生しました。

「リュックは、両手があいて自由に身動きがとれることが大きなメリットですが、実は背負ってるとき以外はほぼ不便なんですよね。まず、物を出し入れするときには必ずどこかに置いてからじゃないとできない。あと、荷物が入っているときと入っていないときとでは形が大きく変わってしまうし、荷物の重みでリュックがダラッとすると、ジャケット姿でもルーズな印象を与えてしまう。そうした課題を改善したかったんです」と、3代目である現社長の小川太一郎さんは当時を振り返ります。

3代目の小川太一郎さん

下ろさなくても物の出し入れができ、しかも型崩れせず、後ろ姿が美しく見える、という課題をクリアするため、小川さんはハンドバッグのデザインをもとに構想を練りました。さらに、日本人特有のなで肩体型にも着目し、機能性とデザイン性を兼ね備えたリュックを目指しました。そして、約2カ月間の開発期間を経て、「蔵前街歩きリュック」は産声を上げることとなったのです。

細部まで考え抜かれた機能性がすばらしい!

ここでその優れた設計を細かく見てみましょう。フォルムは底が広い台形型のデザイン。A4サイズの書類や本を収納してもかさばらず、すっきりスリムな印象なので、おしゃれの邪魔をしません。また、アウトドア用リュックの荷重分散技術を応用したU字型のつけ根と湾曲したストラップにより、長時間使用しても疲れにくく、快適な背負い心地を実現しています。ストラップには程よい硬さの芯材を採用することで、なで肩でもずれ落ちにくくしています。

とっても軽い背負い心地で、肩に負担を感じません

開口部は、前側のU字型ファスナーポケットのほかに、サイドファスナーと後ろ側にもポケットがあるので、ショルダーバッグのように肩にかけたまま自由に荷物の出し入れができます。後ろ側のポケットは長財布も奥までしっかり入るサイズなので、貴重品はここに収納しておけば安心です。

A4サイズのものもサイドファスナーからストレスなく出し入れできます

貴重品は後ろ側のポケットに入れておけば、セキュリティ面もバッチリ!

さらに、背面側には極細のポリエステルで織った生地を採用。摩擦により洋服の生地を傷めることがなく、撥水加工がしてあるため、汗をかいても平気です。また、この一面を伸縮性のない生地にすることで、芯材が不要となり、一般的な革のリュックの半分くらいの重さまで軽量化することができました。

手仕事が生む確かな品質と美しさ

こうして機能性とデザイン性の両立を実現した「蔵前街歩きリュック」は、職人がひとつひとつ手仕事で丁寧につくり上げる品質の高さも、長年愛され続ける理由です。

「今、このリュックをつくれる職人は1人しかいません。一流の料理人と経験の浅い新米に同じ材料を渡しても同じ味にならないのと一緒で、どんなに良い素材があっても、確かな技術がなければ上質なものはつくれません。たとえば、ここの縫い目。これだけ厚みのある革を真っ直ぐに縫うのは相当な技術が必要で、それができるからこそ、このデザインも成立するんです」(小川さん)

美しい縫い目に職人の技を感じます

熟練した職人の手仕事なくしては生み出せない、品質と美しさ。余計な装飾がないぶん、時を重ねるほどに味わいを増す革の表情を楽しむことができ、長く大切に愛用したくなるリュックです。

このリュック、当初は女性をメインターゲットにしていましたが、小川さんの予想に反して、男性の購入者が増加。それにともない、ショルダーベルトを長めにしたり、カラーバリエーションを増やしたりしたそうです。

メインレザーの色は15種類以上展開していますが、色の入れ替えも頻繁に行っていて、今後また新色が出る可能性もあるとか。

色のバリエーションが豊富なのも「蔵前街歩きリュック」の魅力です

また、このリュックでもう1つ注目したいのが、裏地に明るい色を使っていること。これは、細かいものも見つけやすく、さらに、ファスナーが開けっ放しになっているときにすぐに気づけるようにするための工夫とのことで、「なるほど!」と感心してしまいました。

中を明るい色にすることで、閉め忘れの防止にも

端材もムダにせず、有効に活用

「蔵前街歩きリュックの店 MESSAGE」で取り扱う商品はバッグがメインですが、店内の一角には革小物が陳列されています。このシリーズは……?

「革をムダなく活用したい」という思いから生まれた小物たち

「バッグに使う革はひとつひとつの部品が大きく、どうしても端材が出るので、残った革を活用して小物をつくっているんです。ミニマム小銭入れとかキーケースなどを作って、最後の最後にできるのがベルト状のケーブルホルダー。これはガチャで販売して、何色が出てくるかも楽しんでいただいています。

こういうものをつくっている根底にあるのは、“もったいない精神”なんですよね。ちょっとしたアイデアと技術があれば、ものを捨てずに有効に生かすことができる。限りある資源を大切に守るためにも、そういう考え方は子どもたちにも伝えていきたいな、と思っているんです」(小川さん)

「ケーブルホルダーは充電ケーブルをまとめるだけでなく、トートバッグのハンドルをまとめるのに使っても便利ですよ」と小川さん

オリジナルの商品を通して、革という素材の魅力、職人による手仕事のすばらしさ、そして、ものを大切にする気持ちを伝えたい──。そんな小川さんの“MESSAGE”が込められた逸品に会いに、お店を訪れてみてはいかがでしょうか。

蔵前街歩きリュックの店 MESSAGE
東京都台東区蔵前4-24-2
TEL:03-3861-1081
URL: https://message-bag.com/

Photo by Hanae Miura
Text by Miki Matsui

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