モノづくりを支える名脇役が集う町 ー三筋町 PART1ー台東モノマチエリア探訪
台東モノマチエリアは10の町で構成されています。一つひとつの町に個性があり、特徴があり、趣がある。このシリーズでは一つの町をクローズアップして、その歴史や魅力に迫ります。
さて、今回取り上げるのは「三筋」。「三筋ってどこ?」と聞かれることも多いエリアですが、実はモノづくりになくてはならない「ある小さなモノ」を作り供給し、モノづくり産業を支えている町なのです。はたしてその「モノ」とは?「三筋」の魅力に迫ります。
ここは金具やパーツの専門業者が集う町
車に気をつけながら、視線をちょっと上に向けて三筋町を歩いてみてください。ビルや店の看板にこんな文字が多数踊っていることに気づくはずです。
ハトメ、ホック、カシメ、口金、ヒネリ、手カン、ボタン、ナスカン、錠前。
知らない言葉もあるけれど、知っている言葉から類推すると、どうやらこの界隈は金具の専門業者が集結している町らしいーー。そう、三筋町はバッグや靴、小物類など服飾製品には欠かせない金具やパーツを扱う問屋やメーカーが一堂に集う町。この町に1960年代から店を構えるある老舗の社長によると、三筋に来れば金具はほぼすべて入手可能。すべて完結するエリアなのだとか。
例えば、真鍮を曲げたり、型で抜いたり、削ったりの加工はすべて別々の職人が行います。溶接にも別の職人技が必要になりますが、この三筋町に来ればそのすべての工程が完結するのです。
東急ハンズやユザワヤに行けば、手作りバッグ用の金具類が多数販売されていますが、その大本といえるのが、ここ三筋町。だから価格も約10分の1と飛び切り安く、「銭」の単位で販売されているパーツ類もたくさんあります。三筋町は、モノづくりの原点の町といって過言ではありません。
レディスもののバックルならおまかせ!
三筋町には特定のパーツだけを扱うニッチな業者も数多く存在します。
例えばバックル。バックルだけでも相当にニッチですが、三筋にはレディスのバックル専門のOEMメーカーもあります。
バックルは強度試験を繰り返し、合格したものだけが販売されていることをご存知ですか?品質が悪いものだと、くしゃみをしただけで壊れてしまいかねません。ベルトの素材によってバックルが滑ることもあるので、素材に応じてバックルを短くしたり、ピンをつけたりという工夫が施されています。見た目を格好良くしつつ、強度を持たせるのが金具メーカーの使命。金具加工に関する豊富なノウハウを生かし、日々、顧客の要望に応じた製品を送り出しています。
バックルの需要は流行によって大きく左右されるそうです。ベルトを強調したファッションが流行ればバックルの需要は増しますが、そうでなければ受注はダウン…。残念ながら、最近はベルトを用いたファッションが低調なのに加えて、海外への生産移転も加速しているため国内の市場規模は縮小傾向にありますが、バックルを豊富に揃え、いまも年間数百もの別注名の新作を作り続けているメーカーも存在します。
バックルを含め、金具やパーツは決してファッションの主役にはなれません。でも、こうした小さなモノが脇をしっかりと固めているからこそ、主役である服やバッグ、靴が本来の魅力を発揮できるのです。
三筋町を歩いて、名脇役としてファッションを支える金具のプロの誇りを感じ取ってみませんか。