日本初!パラシュートに用いられる丈夫なパラコードのオリジナルグッズ専門店
「PARACOのパラコード」
セールスマネージャー 山田かよさん
軍隊や救難時に使用されるコードをクラフト用品として訴求
2023年5月。生まれたてのブランドがモノマチでデビューを果たしました。日本初のパラコード・オリジナルグッズ専門店「PARACOのパラコード」です。
といっても、パラコードと何?と思われる方もまだ多いかもしれません。パラコードとはパラシュートに使われている丈夫なナイロンやポリエステルのヒモのこと。カラフルな外皮部分と芯になる7本の糸から構成されていて、太さ4mmのパラコード耐荷重は250kg。「PARACOのパラコード」は米軍の訓練や救難時に使用されているこの丈夫なアメリカ製パラコードに特化しつつ、日本の伝統色をテーマにまったく新しい解釈でラインナップを再構成しています。
運営しているのは株式会社マルコ。LEDライトやナイフ、ポイズンリムーバーなどアウトドア用品や、輸入工具のほか、シューケア製品やクラフト材料などオリジナル商品の企画・販売を手掛けている会社です。
パラコードも同社の取り扱い製品の一つ。主な用途は軍やアウトドアのため、多くはカーキやカモフラ柄など地味な色や柄ですが、中には派手な原色系の色もあり、調べていくと実は用途がバラエティに富んでいることがわかりました。業務の必需品として利用するだけではなく、余暇の趣味として親しむ人が少なくないのです。
ナイロン製なのでパラコードの処理は実に簡単です。切り口はライターで軽くあぶるだけ。編み上げ方もさまざまです。内部に入っている細いナイロン糸を取り出せば釣り糸や縫物糸としても使えます。まったく色落ちしないのも大きな利点といえるでしょう。
ショルダー用のストラップやドッグリード、バッグ、ベルト、アウトドア用品の装飾、靴やバッグの縫い糸、パーカーの紐。調べていけばいくほど、パラコードの応用範囲は幅広い。日本市場でもパラコードの特長を知ってもらえば、もっと多くの人に利用してもらえるはずだーー。こうして同社はパラコードのポテンシャルを引き出して新たなマーケットを開拓すべく、ブランド化に向けて動き始めました。
「PARACOのパラコード」のセールスマネージャーをつとめる山田かよさんは振り返ります。
「アメリカと日本とでは色や柄の好みが違います。オリジナルとして中間色や細かい柄を出した方がいいと考えました。でも、オリジナルの色や柄をつくるには最低でも1200メートルからオーダーしなければなりません。1年間検討して、まずはオリジナルを4色作ることにしました」
和名をつけたオリジナルのパラコードを開発
トライアルとして作った4色のパラコードは卸先から好評を博しました。趣味としての需要は間違いなくある–。確かな手応えを得て、2023年1月に「PARACOのパラコード」の本格デビューが決定しました。舞台は同年5月のモノマチ2023。その理由を山田さんは次のように語ります。
「モノマチは以前から知っていましたが、扱っている商品が工具中心なのでそのままでは出たくても出られなかった(笑)。『PARACOのパラコード』を始めることになったので、せっかく始めるならモノマチに参加してお披露目したいと思いました」
デビューに向けて「PARACOのパラコード」の準備は着々と進んでいきます。弥生人をモチーフにしたロゴは社内で作ったものだとか。
「髪型をよく見るとパラコードなんです(笑)。社内公募し、若い社員から寄せられたデザインを採用しました」
パラコードだからPARACO。楽しいネーミングとロゴデザインの「PARACOのパラコード」は初参加のモノマチでサトー帽子とコラボ。従来サイズの30mタイプに加えて、帽子につけるリボン用の2mサイズも用意しました。
モノマチの成果は期待以上。多くの来街者にパラコードの魅力を知らしめました。以後、ラインナップはどんどん充実していきます。
「モノマチでは2mサイズが好評でよく売れました。やはり長さが30mあると持て余す方が多いんですね。そこで昨年の夏からは5メートルサイズも品揃えに加えました」
現在の「PARACOのパラコード」は約4mmの太さのものが全53色。それぞれ5メートルと30メートルサイズが揃っています。そのうち、日本のオリジナル色は32色。万華鏡、宇治、薄荷、芍薬、白銀、珊瑚、瑠璃紺、藤色、銀鼠など、どれも優雅な和名がつけられています。
「和名にしたのは蔵前にあるブランドとして、下町というか日本っぽいイメージを醸し出したいと考えたからです。複数の色のパラコードを合わせたマルチカラーや緑、紫系の色の人気が高いですね。デザインや色などが被らないようにバランスを取りながら、毎月、2色は新作を出すようにしています」
実際の色味を見る前に「名前が可愛い」「ネーミングが素敵」という理由でオリジナルカラーを「名前買い」
パラコード難民を出したくない
太さ2.4mmのタクティカルコードは全30色(長さ30m)。縫い糸として利用しやすい太さが1.18mmのマイクロコード(長さ38m)や0.75mmのナノコード(長さ90m)もそれぞれ全20色。多彩な品揃えが実現しました。山田さんの積極的な商品開発努力のたまものでしょう。
販路は小売店向けの卸が中心ですが、直営のECサイトで販売しているほか、新宿や渋谷、札幌のハンズにも「PARACOのパラコード」は常設されています。イベントはモノマチに加えて素材博覧会にも出店。SNSでの反響も高まっています。
「PARACOのパラコード」の快進撃を支えているのが、初心者にもパラコードの楽しさを優しく教えてくれるキットや動画、手順書でしょう。昨年の夏には、パラコードにナスカンや簡単な手順書をセットしたキットの発売をスタート。編み方の異なるスマホショルダーキットは8種類、ボトルホルダーキットも同じく8種類が揃っています。
「キットに入れている手順書にはQRコードを記載して、作り方を紹介している動画にアクセスできるようにしています。キットの発売前には社内でパラコードを使ったことのない人に実際に作ってもらっていますね。こちらが思っていたものと違うものができることがあるからです(笑)。パラコード難民を出したくないので、初めての人でもできるだけ出来上がり写真に近づけるような手順書を追求しています。編み方はもっと発信していきたいと思います。蛇腹編みとかぐるぐる編みとか本当にいろいろありますから」
パラコードに興味を持ってくれた人が途中で投げ出したくならないように手順書や動画の改善に力を入れる山田さん。インスタグラムで寄せられる「編み方を教えてほしい」と声に応えて動画をアップすることもよくあるそうです。
パラコードを作品に活用するクリエイターやデザイナーも着実に増えてきました。
「靴や小物など革製品の縫い糸としての利用が増えてきたのはうれしいですね。ネオンカラーは特に好評です。作家さんは色の選び方や使い方に独自性があってすごい。参考になります」
近隣のパーツメーカーと手を組んで、オリジナルパーツの開発も進行しています。プラスチックパーツをくすみカラーに染色したものや、二重リングの表面にレーザーで濃淡をつけてヒョウ柄化したものを、パラコードと合わせて展開する計画です。
「今年のモノマチ2024ではモノマチオリジナルのキットを発売します。昨年のワークショックはすぐに枠が埋まってしまったので、今年はもう少し広めのスペースを確保したいですね。当日に来ていただいても対応できるようにすることが目標です」と山田さんは楽しげに語ります。イベントと開発の両軸に力を注ぐ「PARACOのパラコード」がさらに多くのファンを獲得する未来が見えてきました。
PARACOのパラコード
東京都台東区蔵前4-12-5
TEL : 03-5687-1190
URL : https://paraco-no-paracord.shop/
Photo by Hanae Miura
Text by FUKIKO MITAMURA