モノマチはいかにして生まれたのか〜モノマチ誕生ストーリー

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モノマチは2011年にスタートし、回を重ねて今年5月の開催で13回目を迎えます(オンラインを含む)。10年以上もの歴史を刻んでいるモノマチはいかにして誕生に至ったのでしょうか。ここでモノマチの歴史をひもとき、モノマチ誕生ストーリーを紹介しましょう。

きっかけはデザビレの施設公開だった

モノマチは回を重ねて今年で13回目を迎えます。いま全国に地域活性化イベントやオープンファクトリーは多数開催されていますが、モノマチは完全なる自主運営。自治体の運営でもなく、広告代理店や業界団体など特定の企業や組織に頼ることもなく、第1回から地元の有志たちが手を携えて運営しています。同様のイベントの中でもきわめて異色の存在です。

では、モノマチはどのようにしてスタートしたのでしょうか。いまから遡ること12年前。ファッション/デザイン起業者向け創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」(以下デザビレ)の鈴木淳村長が、モノづくりに関心がある消費者をこの地域に呼び込み、活性化するためのイベント開催をデザビレ卒業生や地場産業に呼びかけました。毎年実施しているデザビレの施設公開と地域のモノづくり系のショップ/企業が連携し、この地域を回遊してもらうことでモノづくりの町の魅力を感じてもらおうというイベント「台東ファッションザッカエリア」です。2010年5月に開催されたこのイベントがモノマチの前身といってもいいでしょう。

またこの頃、日本で2番目に古く、全長330mの長さを誇る「佐竹商店街」(台東区台東3丁目)の組合組織である佐竹商店街振興組合から「商店街を含めて、地域を盛り上げるイベントをなにか実施できないか」という打診がデザビレやこの地域の主要企業に寄せられていました。

地域を活性化する打開策がほしい、突破口を開きたい、モノづくりの町の活力を取り戻したい。デザビレ施設公開を軸に、各方面でわきあがっていた思いや意欲が結実し、実現したのが翌2011年5月に開催された第1回モノマチです。

同年3月に発生した東日本大震災の影響でモノづくり企業は大きな打撃を受け、町全体の活力が低下していました。震災2ヶ月後にイベント開催することに対しては賛否が別れましたが、台東区上野はかつての東北・北陸からの終着地。その台東区からモノづくりを通じた町おこしをすることで、東北・北陸の人々を少しでも勇気づけ応援することができたら–。そんな想いで実現に至ったのです。

記念すべき第1回モノマチで配布したタブロイド判のガイドブック。ページ数は8Pでした。

初期は手弁当で参加店を勧誘

初回からモノマチは、メーカー/問屋/小売/問屋/デザイナーなどモノづくりに携わる異業種で構成されていました。第1回からモノマチに参加している株式会社アーキの青木誠治社長は言います。

「当時は参加店イコール実行委員。有志で集まって、手弁当で一軒一軒、地域の店や企業を回って参加店を勧誘していました。この地域を盛り上げたいという一心でしたね。結果、第1回の参加店は17店でしたが、思ったよりもお客様に来ていただき、この地域を歩いていただいたなという印象でした」

第1回のチラシとマップ。参加店が少ないので地図もさっぱりしています。

文具店のカキモリも、勧誘されて第1回からモノマチに参加し続けている店の一つです。店主の広瀬琢磨さんは当時をこう振り返ります。

「2010年に蔵前に店をオープンしましたが、私はデザビレ出身でもなければ、この地域の出身でもない。知り合いがほとんどいない中、地域にとって意味がある店になりたいと常々考えていました。そんなときに、モノマチに参加しないかと誘われたんです。参加することに迷いはまったくありませんでしたね。東日本大震災の後、来店数が落ちていたので、モノマチを機に新しいお客様にたくさん来ていただいたのは本当にありがたかったです。と同時に地域のつながりもできて、革小物のお店や箔押しの職人さんともつながり品揃えの幅が広がりました。これは大きな収穫です」

第1回は準備不足もあり、やや不完全燃焼気味だったことから、同年11月に第2回のモノマチが開催されました。このときの参加店は62店。大雨にもかかわらず、多くのお客様に来訪いただきました。

モノづくりの楽しさを発信することが町の活性化に着実につながっていく—-。確かな手応えを得て、有志一同は2012年5月に第3回モノマチを開催。参加店は119店に増加しました。

そして、翌2013年5月に開催された第4回モノマチの参加店は280店、来場者数はのべ10万人におよびました。メディアでこの地域が取り上げられる機会が急速に増えていったのもこの頃から。モノマチはモノづくりの町の認知度アップに大きく貢献するイベントに成長したのです。

第4回のガイドブック。オールカラー152頁の豪華版。事務局の血と涙の結晶です。

持続可能な地域活性化イベントへ

しかし、ここからモノマチは方向転換を行います。あまりに参加店が多くなり、有志によるボランティア的な運営では負担が重くなりすぎて、イベントの継続が難しくなってきたためです。そこで第5回を前に「モノづくりで町おこし」を目的にモノマチを主催するだけでなく年間を通じて継続して活動する組織「台東モノづくりのマチづくり協会」を設立しました。モノマチを持続性のあるイベントにしていくために収支報告を明確にし、運営作業の効率化を図ったのです。

アーキの青木社長は言います。

「2014年にはトライアルとして秋にもモノマチを開催しましたが、やはり年に2回の開催には無理がありました。でも、これはやってみたからこそわかったこと。モノマチが目指しているのは規模の拡大ではありません。この地域に根ざし、モノづくりの魅力を継続して発信していくことです。マンネリ化という声もありますが、いつも変わらぬ店がそこにあることは大事だと思います。ただし、それだけではなく、新しさも欠かせない。3年ぶりの開催となる今回のモノマチでは、懐かしさと新鮮さの両方を楽しんでいただきたいですね」

カキモリの広瀬さんもモノマチの本来の意義や目的を保つことの重要性を強調します。

「途中でフェードアウトしていく地域イベントが多いなか、モノマチがこれだけ続いているのはモノづくりの魅力を伝えていくという元々のコンセプトがしっかりしているからだと思うんです。目的は単なる集客でなく、街の活性化にあることはこれからもずっと訴え続けていきたいですね。カキモリとしては、お店に来ていただいた方にモノマチの新しいプレイヤー(参加店)を伝えていく役割を果たしていきたいと考えています。持続可能なイベントには新しいプレイヤーの存在が不可欠ですから」

町に根ざし、モノづくりの魅力を伝え、町の活性化につなげていく。これからも私たちは軸足をずらすことなく、お客様にモノづくりの楽しさを満喫していただける持続可能なイベント、モノマチをお届けします。3年ぶりの開催にぜひご期待ください。

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